バンガロー?いや、いかにも山小屋っぽい扉をくぐる。そこに見えているのはダイニングキッチンと言えばいいのであろうか。あまり大きくはない長方形の部屋の真ん中にテーブルが置かれ、その奥が水場になっている。キッチンより大きなガラス窓があり、眩しいばかりに木漏れ日が注ぎ込んでいる。
入ってすぐ気づいたことがある。木の香である。見渡せばところどころに漆喰で塗られた箇所はあるもののほとんどが木でできている。
「すべて、オヤジ一人の手によるものだよ」とオーナー。アンコーナの役所に定年まで勤めた老農夫はまだ在職中から、もともと先祖代々受け継がれてきた山間部の所有地を切り開いて広大な畑の基礎をつくりながら、そこに寝泊まりできるような小さな小屋を建てたのだという。トマト畑の赤があまりにも鮮やかであり、美しさだけが際立っていたので“苦労”という文字がその時は浮かばずにいたのだが、かなりの年月をかけて整地され耕されたところであることを考えると、この風貌の小屋でさえ何だか大きな存在であり、一人の男の歴史が見えてくる。
足を踏み入れた食卓のある部屋にそれ以外の何も見えなかったがために、ここのどこに寝泊りできるのかと連れて来られた面々が顔を見合わせていたが、「ほら、こっちへ来てごらん!」と声に導かれて、物置きにしか見えない小さく歪なドアを開けたらそこから下に階段が延びている。階段というよりは梯子に近い幅の狭いところを体を斜に向けながら降りていくと、今度はゆったりとした通路が現れる。ここは地階なのか。いや、窓はいくつかあって陽は差し込んでいる。階段の横にシャワールーム、そして様々なかたちのベッドルームが3部屋あるのである。山の斜面を削り取ってつくられたのであろう。実際ここが建物の基盤になる1階なのである。
ダブルベッドの部屋、シングルベッドがふたつ並んでいるところ、そして「これがお前の部屋ね」と開けられたドアの先にはなんと二段ベッドが置いてある。どちらで寝ればよいか尋ねると、「好きなところへ」とオーナー。高いところが好きではあるが、慣れぬ物件に一人きりでいることを考えると守勢というか、下段を選んでしまう。本能なのかもしれない。
自分の寝室に外に抜けられるドアはないが、立派な木枠の窓がついている。そこを開けると柔らかな風が転がり込んでくる。自然100%の本当に美味しい風なのだ。
どこからか犬の吠える声が近づいてくると、オーナーからみなに向けて集合するように、入り口のある2階に集まるように声が掛かる。犬を連れた奥方の到着らしい。
窓を閉めて、リックを部屋に残したまま、細い階段を上がっていく。
堂満尚樹(音楽ライター)
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